私の口癖でもあるが、このワークショップでは「ちょっと」というのがキーワードかも知れない。気持ちも時間も負担も「ちょっと」。
「ちょっと」もまた大変とも思う。「大きなエネルギーを持って一つの舞台を作りあげていく」ことに比べたら楽なのだけれど、まず「お芝居にするためのちょっとしたエピソードを話す」というのも少しハードルがある。それぞれ初めましての人も多い。「ちょっとしたこと」で「みんなの前で話せること」というのは意外と思い出せない。私は前回振られた時、思いつかなかった。けれどみんながちょっと頑張って出してくれた日々の「ちょっと」、それらスケッチの累積は今日もまた豊かなものだった。
転がってきたボール、猫の声、サウナのおばあちゃん、使いづらいキーボードの配列…そんな話たち。
最後にお芝居をまとめ上げるにあたり演じやすいように構成もちょっとするのだけれど、恣意的なデザインはあまりしていない。ただ繋いでみただけで、そろりと差し出してくれた日々たちが小さな紐で結ばれ、ひととき編まれ、すぐにほどかれる。
誰にでも起こること、誰かにしか起こらないこと。思い出せること、思い出せないこと。話せること、話せないこと。みんながそんなハードルを「ちょっと」渡って差し出してくれた小さなエピソード。その不揃いな断片、私たちが秘めていた(隠し事という意味ではなく自分でも忘れてしまうような)小さな日々を演じあい、交換し合った。
さてみなさん、それぞれの役割をちょっとだけ解放しにきませんか?
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