水性演劇部の始まりについて、
前澤さん曰く、2019年『ハイツ高山』という作品を一緒に作っていたとき、日々のあれこれを井戸端会議のようにしゃべり合って、「じゃ、それちょっと演劇にしてみようか」と、演じたり見たりすることを、その日集まった人たちとしたいとわたしが言っていたらしい。らしいというのは嘘でよく覚えている。ずっと考えていたことだから。
どうしてそんなことをしたかったのかということを手短にいうと、演劇はもっと身近にだれでもアクセス可能な芸術表現なのではないかと思っていたから。脚本家も演出家も俳優も特別なスキルが必要ではあるけど、その特権的な制作構造から作られる演劇だけではない演劇の方法を探すということを、これまでわたしは繰り返しやってきた。
その最もシンプルな形がこの『水性演劇部』だと思う。演劇の枠組みだけを利用して中のルールを設けない、参加者すべてが脚本家で演出家で俳優であり観客である。誰の指示もなくそれぞれが自分の判断で都度役割を変え、押したり引いたり拮抗しながら演劇を作る場所。そして何より面白いものが生まれる場所であること。そんな夢みたいなこと出来るのかなと思っていたけど、今のところ毎回驚いている。
9月のWSは誰からともなく過去の恋の話が始まり、連鎖してそれぞれの恋バナが続き(もちろん恋バナ以外もあり)それが作品になった。その実際のシチュエーションはおそらく笑い話じゃないだろうと察するが、演劇にするとくすくすと笑いが起きる。そして秘事を打ち明けたことからか強い連帯感が生まれ大いに盛り上がった。
たかやま
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